以下は、社団法人空気調和・衛生工学会編集 空気調和・衛生工学会規格「SHASE−S 217-2008 グリース阻集器 D.2 維持管理上の留意点」を許可を得て転載したものです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
D.2 維持管理上の留意点 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
阻集器の性能を維持するためには、適切な維持管理が不可欠である。阻集器の維持管理とは、保守点検及び清掃を行うことである。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(1) | ちゅう房排水に関する注意事項 阻集器の阻集対象は動・植物性油脂であり、溶解性のBOD(生物化学的酸素要求量)などの有機物成分を阻集することは期待できないので、できるだけ流さないようにする。また、高温水・強アルカリ洗浄剤の流入は、エマルジョン(乳濁化)を促進し、油分の分離浮上を困難にするので避ける必要がある。そのためには、次の事項に留意することが重要である。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
a) | 洗い流す水は、適量にし、過剰に使用しない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
b) | 洗剤は、希釈して使用するなど使用量を削減する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
c) | 高温水は、直接流さないで、水を加えるなど冷やしてから流す。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
d) | 廃食油は、流さない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
e) | 乳製品など汚濁負荷量の高いものは、できるだけ流さない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
表 D.1− グリース阻集器点検表 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
建物名称 | 点検月日 | 年 月 日 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
店 舗 名 | 点 検 者 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
形 式 | 製造業者名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
サ イ ズ | L× W× H | 材 質 | SUS FRP SS その他 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
点検項目 | 点検及び保守内容 | 結果 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 | 作業環境 | 本体の上部及び回りに障害物などがないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
点検・清掃が容易にできるか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2 | 全 体 | 本体内部に腐食や劣化がないか | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
阻集グリース及びたい積残さの状況はどうか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
異物・きょう(夾)雑物の混入がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
悪臭がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
排水の状況(水位・流れ)はどうか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | ふ た | がたつき(段差・反りなど)がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
さび及び腐食がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
取手の欠損・欠落がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
4 | 受 枠 | 破損・劣化がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
がたつき(段差・反りなど)がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
5 | バスケット | 適切に設置されているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ちゅうかいがあふれていないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
取外しが容易にできるか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
破損・劣化がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
毎日清掃を行っているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
6 | 隔 板 | 適切に装着されているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
取外しが容易にできるか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
取手の欠損・欠落がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
7 | トラップ | 適切に取り付けられているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
固定されているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
掃除口があるか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
破損・劣化がないか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
封水が確保されているか。 | 適・不適( ) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特記事項 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
f) | ちゅうかいは、流さないで取り除き、分別処理する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
g) | 紙、布などで汚れをよくふき取ってから、調理器及び容器を洗う。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
h) | 調理以外の排水は、流さない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
i) | 油脂分を分解して、排水として流すタイプの油処理剤などは、使用しない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(2) | 保 守 点
検 保守点検が適切でないと、排水管の詰りや汚水の滞留などにより、悪臭及び衛生害虫の発生を招き、正常な機能が維持できなくなる。環境衛生上良好な状態に維持するためにも、点検を実施し、異常の有無を確認するとともに、異常が生じた場合、速やかに管理者に連絡する。また、必要に応じて補修及び整備を行うことが重要である。 点検は、性能・機能を維持することを目的とし、清掃のたびに行い、必要に応じ修理・取替えなどの措置を講じる。グリース阻集器点検表を表D.1に参考として示す。 |
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(3) | 清 掃 阻集器は、水表面に阻集したグリースと底部にたい積した残さを適時除去しなければならない。除去を怠ると、阻集性能が損なわれるばかりでなく、阻集物の腐敗などにより非衛生的な状態になるので、適切に除去・清掃を実施しなければならない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
a) | バスケットの清掃 バスケットにたまったちゅうかいは、日常清掃として少なくとも1日1回、ちゅう房業務終了後に除去することで、バスケットの初期機能を維持し、配管への異物の混入を防ぐことが可能になる。また、バスケットのちゅうかいは水を切って適切に分別処理しなければならない。日常清掃を頻繁に行うことで、腐敗臭が少なくなり、阻集グリースやたい積残さも減少する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
b) | 阻集グリース及びたい積残さの除去 阻集器の水表面に阻集したグリースと底部にたい積した残さは、阻集器の選定の際に決めたそれぞれの掃除周期で掃除を行って、除去するようにする。阻集器は、阻集グリースの質量とたい積残さの質量との合計の最大値が標準阻集グリースの質量以下となるように掃除周期を決めて選定している。そのため、この掃除周期を超えると、阻集グリース及びたい積残さの質量が標準阻集グリースの質量を超えることになり、阻集性能が低下する。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1) | 阻集器水表面に阻集したグリースの除去は、阻集グリースの掃除の周期(工場製造阻集器では、4.2.3.1の式(4)又は4.3.3.1の式(8)におけるixの値、現場施工阻集器では、6.の式(10)又は式(10’)におけるixの値)を基に行う。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2) | 阻集器底部にたい積した残さの除去及び阻集器本体・構成部品の掃除は、たい積残さの掃除の周期(工場製造阻集器では、4.2.3.2の式(5)又は4.3.3.2の式(9)におけるibの値、現場施工阻集器では、6.の式(12)又は(12’)におけるibの値)を基に行う。 ちゅう房使用水量に関する調査結果によると、おおむね阻集グリースの除去は1週間、たい積残さの除去と阻集器全体の清掃は2〜4週間の周期としている。 |
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(4) | 油脂分を分解する菌又はオゾンなどを利用するばっ気装置の追加設備の禁止 既設の阻集器に油脂分を分解する菌を投入してばっ気したり、オゾンをばっ気したりする処理装置を追加して設置すると、ばっ気装置によって阻集器内がかくはんされ、分離浮上している阻集グリース及びたい積残さが流出することになる。したがって、ばっ気装置を追加設置してはならない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
(5) | 油脂分を分解して、排水として流すタイプの油処理剤は使用しない 使用済み食用油と混ぜて排水として流すタイプの処理剤、グリース阻集器内の油脂分を分解して排水として流すタイプの処理剤などは、油脂分を乳化させ分散しているだけで、油脂分は分解されることなく排水されるので使用してはならない。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
出典 | 社団法人 空気調和・衛生工学会発行 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
空気調和・衛生工学会規格 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
SHASE−S 217-2008 グリース阻集器 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
P.18 D.2 維持管理上の留意点 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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